技術紹介
津波特定避難困難者数の推計
弊社が得意とするオープンデータを活用した空間解析・地域課題解決のG空間コンサルティングの一例として、国土交通省が作成した「津波防災まちづくりの計画策定に係る指針(第1版)」で示されている津波特定避難困難者数の推計手法について紹介します。
津波浸水想定や津波災害警戒区域のうち、避難対象地域の外や避難対象地域内の津波避難ビル等への避難が困難となる特定避難困難地域を明らかにするとともに、特定避難困難地域内に滞在している人の数をGISとオープンデータを活用して推計します。
特定避難困難地域と特定避難困難者数の推計手法
使用するオープンデータ
空間解析に必要となるデータは、下記で公開されているデータを利用する。
データ | URL |
---|---|
人口統計(e-Stat) | https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do |
背景地図(基盤地図情報) | http://www.gsi.go.jp/kiban/ |
避難所(国土数値情報) | http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ |
道路中心線(OpenStreetMap) | https://openstreetmap.jp/ |
空間解析手順
1.津波浸水想定区域の設定
標高メッシュデータから等高線を自動生成し、津波の高さを想定した標高10m以下の地域を浸水区域に設定します。
2.避難地点の設定
避難経路となる道路の中心線データと10m等高線データが交差する箇所にポイントデータを自動発生させ、これを避難目標地点とすることが可能です。
3.避難地点へ接続する道路ネットワークを自動生成
徒歩による避難を想定し、人が通行できる道路をもとに津波到達時間までに避難可能な経路を算出しなければなりません。避難経路となりうる道路中心線と避難目標地点との自動接合を図り、避難経路ネットワークを生成します。
4.避難地点からの距離によって道路ネットワークを自動生成
経路ネットワークをベースに、想定される津波到達時間内に避難目標地点まで到達可能な経路を自動抽出します。地震発生から避難準備できるまでの時間を考慮し、避難目標地点まで500m圏内で算出しています。
5.避難可能経路からのバッファリングで避難可能範囲を生成
経路ネットワークをベースに、想定される津波到達時間内に避難目標地点まで到達可能な経路を自動抽出します。地震発生から避難準備できるまでの時間を考慮し、避難目標地点まで500m圏内で算出しています。
6.津波浸水想定区域と避難可能地域の差分で特定避難困難地域を抽出
津波浸水想定区域と避難可能区域のポリゴンデータ同士の差分抽出によって生成します。
7.統計メッシュと避難困難地域の面積比率から避難困難者数を推計
国勢調査データ(男女別人口総数及び世帯総数)の地域メッシュ図形をGISに取り込み統計属性を付与します。次に、特定避難困難地域を地域メッシュで分割して統計情報を結合します。さらに、メッシュ図形面積に対する該当メッシュ内の特定避難困難地域の面積割合いに応じて、統計人口から避難困難者数を算出します。